材料費を考える上で理解するのがなかなか厄介なのが、価格差異の考え方です。
標準原価計算を適用している会社は、年度が始まる前に各品番ごとの材料費に標準単価を設定します。
その標準単価と実際単価の差異を価格差異と呼んでいます。
さらに価格差異には大きく分けて2種類あり、材料購入時に標準単価よりも安く(もしくは高く)購入した場合に発生する材料費価格差異と、元々予定していた製品の仕様を変えることで発生する仕様変更価格差異があります。
会社により名称が異なると思いますので、ご自分の会社で使用している用語を当てはめてご理解頂けたらと思います。
材料費価格差異と仕様変更価格差異の違いとは?
まず材料費価格差異ですが、ある製品のデータを下記とします。
(ここでは計算をしやすいように加工費を無視します)
①材料Aの標準価格@100円
②材料Bの標準価格@120円
①+②⇛ある製品の標準価格220円
このとき、材料A、材料Bともにコストダウンの交渉が成功したとして、実際価格は下記通りとします。
①材料Aの実際価格@80円
②材料Bの実際価格@110円
①+②⇛ある製品の実際価格190円
この場合、実際価格は標準価格の220円よりも30円安い190円になりましたので、この30円分が製造原価で良化したことになります。
そして次は仕様変更価格差異です。
ある製品のデータの前提は上記と同じとします。
①材料Aの標準価格@100円
②材料Bの標準価格@120円
①+②⇛ある製品の標準価格220円
このとき、コストの安い材料を使用するために仕様を変更して、材料Aの代わりに材料Cを使い、材料Bの代わりに材料Dを使うこととします。詳細は下記です。
①材料Cの実際価格@90円
②材料Dの実際価格@90円
①+②⇛ある製品の標準価格180円
この場合、実際価格は標準価格の220円よりも40円安い180円になりましたので、この40円分が製造原価で良化したことになります。
価格差異は誰の手柄か?
上述したように材料費価格差異と仕様変更差異では方法は異なりますが、ともに原価低減をしていることになります。
(もちろん逆の悪化もあり得ます)
違いは、“元々設定していた材料費自体を安く買っているか”、と“製品の仕様変更をして、元々設定していた材料を変更して安い材料を使用することにしたか”になります。
材料費価格差異の例では、製品の標準原価220円に対して、コストダウンの交渉が成功し、購入価格を下げて実際単価を下げました。
この場合は安く材料を買い付けた原料調達部門の手柄です。
大量に購入する、また安く買えるように長期で契約をする、等の交渉術で安く買い付けることのできるのは原料調達部門であるからです。
次に仕様変更差異の例では、仕様を変更してコストが安い材料を使うようにしています。
この場合は製品の仕様変更を行った技術部門の手柄です。
技術部門には材料自体の価格を下げる機能はありませんので、別の材料を使うことで材料費を下げる、またコストダウン目的だけでなく、性能の向上を目指すために仕様変更を行う、といったことを行うのは技術部門であるからです。
このように”価格差異”と一言で言っても一つのやり方だけではないので理解するときにはご注意下さい。
工場経理としては、自分の工場はどのような手法で材料費が安くなっているのかを見ることで、どの部門がちゃんと仕事をしているのかわかります。
私の経験上では、材料単価は相場に大きく左右されますので、材料費価格差異は良化・悪化の振れが大きい一方で、仕様変更価格差異の方は技術部門で毎月計画金額を設定し、地道にコツコツとそれをこなしていく、という状況でした。
ちなみに勘定科目ですが、材料費価格差異は材料原価差額(本社勘定)、仕様変更価格差異は標準外材料費(工場勘定)が一般的です。
会社によって運用方法は変わってくるので、成果の出やすい方に注力するようにして原価低減に取り組みましょう。