メーカーにとって、原価低減を行うことは常に求められることです。
原価を低減するためには、様々な場面でどの選択をすれば原価が低減できるか、コストシミュレーションを行うことが必要です。
今回の記事では、私の体験談を基にコストシミュレーションについて解説します。
原価低減のためにはコストシミュレーションを行うことが必要
私が工場経理をしていた際、原料調達部門からこんな提案がありました。
「原材料を安く購入できそうだが、その場合は工場で2名の増員が必要」とのこと。
原材料を安く購入できるのは、メーカーにとってはかなりのメリットです。
人件費、エネルギー、経費など加工費の低減ももちろん重要なのですが、原価に占める割合が一番大きいのが原材料だからです。
ですからこの提案はかなり魅力的でした。
また、なぜ2人必要なのかというと、私のいた工場の形態だとこの原材料の場合、荷降ろしが厄介なのだそうです。
そこで、荷降ろしの際に常に2人を付けてほしい、とのことでした。
これにはかなり悩んで色々と検討しました。
原材料費の安くなる金額に対しての2人分の人件費増が割に合うのか、また本当に荷降ろしで2人付ける必要があるのか等・・。
シミュレーションした結果は?
結論としては、その提案は採用しませんでした。
確かに原材料費は原価に対する寄与率が大きく、安くなるのはありがたいのですが、その原材料費がいつまでこの価格で購入できるか不明です。
原材料の価格は相場によって大きく変化しますので、今の価格は一時的なことかもしれません。
また仕様変更があってこの原材料を使用しなくなる恐れもあります。
対して2人分の人件費は、雇用をする限りは今後ずっとかかることが想定されます。
むしろ昇給率を考慮しますと、年々人件費があがっていくことになります。
そのように整理をし、一時的な効果のために増員はできないと判断しました。
これには原料調達部門より反発を受けました。
せっかく安く購入できるのにもったいない、ということですね。
なぜ原料調達部門は強く主張してくるかと言いますと、自分たちの評価が上がるからです。
原材料費を安くするのは原料調達部の仕事で、安く買えたことが実績としてあがれば評価が上がります。
ただ工場側から言わせてもらうと、原材料費だけ安くなるような部分最適な考え方はやめてほしいということです。
工場経理は原価全てを見ますので、全体最適を意識して考える必要があります。
私としては、このようなことを整理して捌くことは、工場経理実務の醍醐味と考えています。
このように原材料費と人件費を比べたり、
・社用車をリースにするか、固定資産として購入するか比べる
・電気を自家発電にするか、買電にするか比べる
といったこともコストシミュレーションをして、メリットがある方を都度選択していきました。
工場経理は直接的な原価低減はできませんが、シミュレーションを行うことで原価低減のための提案はできます。
コストシミュレーション作業は手間が掛かって面倒に思うかもしれませんが、自分がシミュレーションした結果、工場の原価低減ができれば安いものです。
それに突き詰めて作業をすると、色々な発見もあってなかなか楽しいので、現状の運用方法に疑問を持ち、色々と比べることをやってみてはいかがでしょうか。